今回は空調業界で使われる用語について、空調工事の現場で働く職人としての立場から砕けた表現も交えて解説していきたいと思います。
思いついたら随時更新していく予定です。
基礎知識編
略して「空調」と呼ばれる。空調設備は「空気調和設備」。
空間の温度、湿度、換気まで空気調和の範囲に含まれる。
蒸発、圧縮、凝縮、膨張という冷凍サイクルを繰り返し、冷媒の蒸発熱を利用して物を冷やすための装置。
冷媒の流れは冷やすときと逆になるが、冷凍サイクルで生じる熱を利用して暖房を行うこともでき、エアコンも冷凍機の中に含まれる。
「エアーコンディショナー」の略。空間の温度や湿度を調節する製品。
昔は暖房機能はおまけみたいなもので、みんなほとんど冷房しか使わず、「クーラー」と呼ばれたりしていた。
冷媒ガスがR410AやR32になってからは、暖房も充分使えるレベルになり、現在はエアコンと呼ぶのが一般的。
主に家庭に取り付けられるエアコン。
壁に取り付けるタイプがほとんどだが、天上カセット形や隠蔽形でも「ハウジング」と呼ばれるものが、一応ルームエアコンに含まれたりする。
電源は単相の100Vか200Vになる。
業務用のエアコンはこちらのタイプになる。
冷媒配管も太くなり、電源も動力(3相)のものが多くなる。※単相の200Vもある。
ビル用マルチエアコンも、この中に含まれたりするが、現場では「パッケージエアコン」が基本的に室外機1台に対して室内機が1台か、2台〜4台あっても同時運転になるもの、という認識。
「ビル用マルチエアコン」が室外機1台に対して個別運転できる室内機が複数台1系統の冷媒配管で繋がっている、というタイプを指すことが多い。
エアコンと聞いて一般的に思い浮かべるもの。
建物の内部に取り付けられ、その空間の空気を吸い込み、熱交換された冷風や温風を吹き出す。
天井カセット形、隠蔽形、ビルトイン形、床置形、壁掛形などがある。
室内機と対の存在。
屋外に据え付けられ、基本的に冷媒配管と通信線で室内機と繋がっている。
熱交換器、圧縮機、ファン、基盤などで構成されており、ファンの風が前方に吹くものや、上方に吹くものがある。
空調機、冷凍機のメインとなる配管で、この中を冷媒が流れる。
保温材の付いた銅管を用いる。保温材の厚みがあるほど断熱性が高い。
室内機から室外機まで繋がっており、通常「液管」と「ガス管」のペアで構成される。
エアコンをはじめ、ものを冷やす冷凍機からは、熱交換器に付着した結露水がドレンパンという受け皿にたまり、ドレンが排水される。
その排水がずっと貯まっていけば機械からあふれ出してしまうため、ドレンを排出し、メインの排水管や屋外に流すための配管をする必要がある。
これをドレン配管と呼ぶ。冷たい水が流れて結露しやすいため、ドレン配管も保温材で覆ったり、断熱を施す必要がある。
エアコンの配管内に充填されている、熱の媒体となるガス。
主にフロンガスが使われており、凝縮と蒸発の過程で発生する熱を利用して冷房または暖房運転を行う。
かつてはオゾン層破壊係数の高いHCFCである、R-22が主流であったが、オゾン層を破壊しないHFCである、R410AやR-32が登場し、現在はこれらが主流。
R-22の代替フロンとして、R407Cという冷媒ガスもあったが、その後に登場したR-410A、さらにR-32にとって代わられている。
ちなみにR407CやR410Aは混合冷媒で、組成するガスにはR-32が含まれている。
業務用でいちばん目にする事の多いエアコン。天井ボードを開口し、そこに埋め込むように取り付けるタイプ。
中でも化粧パネルが950mm×950mmの正方形の形をしたものが多く、真ん中の吸い込みグリルから室内の空気を吸い込み、4方向に風を吹き出す。長方形のものは2方向に風を吹き出す。
本体が天井の中に完全に隠れてしまっていて、吸い込みと吹き出しはダクトを接続したボックス、を介して行うタイプ。
技術編
冷媒配管の銅管を接続する際に真鍮製の「おねじ」とそれに対応する「めねじ」のナットを利用して接続する。
そのナットを銅管に差し込んでおき、その銅管の端部をラッパ状に拡げる技術のことをフレア加工という。
広がったツバがナットに引っ掛かり、おねじ側の受けの面とナット側の受けの面でそのツバを挟み込むことで銅管が固定され、接続される。
基本的に室内機、室外機の接続部で用いられる。(溶接での接続の機械もある)
冷媒配管を接続する手段として、フレア加工とともに基本的な技術が溶接である。
「酸素」と「アセチレン」の2種類のガスを用いたガス溶接が一般的だが、アセチレンだけを使用するバーナーもある。
ガス溶接を行うには「ガス溶接技能講習」の資格を取る必要がある。
エアコンを据え付けるためのボルトにナットを取り付けて締め込む際、振動が長期的に伝わってナットが緩んでいくのを防ぐため、さらにもう一個のナットを入れて2つのナット同士を固く締め付ける技術。
さらに、締め込んだ時にマーキングをしておくと、緩んでいないことが確認できて安心である。(役所物件やゼネコン、サブコンの現場では基本的にマーキングが求められる)
建物を建てていく際、施工をしていくために職人が寸法を追えるように、基準となる線を現場の土間スラブや壁に出していく。これを墨出しと呼ぶ。
容易に消えてしまわないように「墨」で基準線を引くため、「墨出し」と呼ぶ。
しかし、空調屋でも設備屋でもなんでも、そういった基準となる線から空調機や配管の位置の寸法をとって印をつけていくこともまた、「墨出し」と呼ばれる。
「墨」ではなくチョークラインや鉛筆やマジックを使っていても、寸法をとって位置を出すこと自体を「墨出し」と呼んでいる。
冷媒配管内の冷媒ガスを室外機内に押し込むこと。具体的には強制冷房運転にするかポンプダウンスイッチを押し、液側のバルブを全閉にして、しばらく運転し、ガス側の冷媒がもう戻ってこない負圧の状態になったらガス側のバルブを全閉にする。ゲージマニホールドをサービスポートにつけておくと圧力の変化が分かる。
道具編
フレア加工を行うための工具。手動式のものと電動式のものがある。
使用するフレアナットのサイズに合わせた受けに銅管を挟み込んで固定し、ハンドルを回したり、トリガーを引いたりすると円錐状のコーンが回転しながら銅管の端部に食い込みラッパ状に広げていく。
電動のフレアツールは使うのに慣れたら神ツールとなり得る。
冷媒配管を「折らずに」「綺麗に」曲げるための道具。
レバーベンダー、ラチェット式ベンダー、直管ベンダーなどがあるが、配管のサイズに合わせたシュー(半円状の部分)とガイド(シューの外周状に銅管が固定されるように抑える部分)を取り付けたり、基本的に適合するサイズのものを使う。
直管ベンダーは、場合によって必要なサイズのシューとガイドを買い足す必要がある。
一般的に、アセチレンと酸素を使用したガス溶接に用いるセット一式のことを指す。
セットには、
- アセチレン
- 酸素
- アセチレンと酸素のそれぞれ専用の調整器(レギュレータ―)
- 逆火防止弁
- アセチレンと酸素用のペアホース
- 吹管
これらからなるセット全体を溶接器と呼ぶことが多いが、吹管だけを溶接器と呼ぶこともある。
溶接時に、同じサイズの銅管同士を接合する際に、片方の銅管がもう片方の銅管に差し込むことができるよう、拡管するための道具。
直管ベンダー同様、最初から入っているコマのサイズだけで対応できない場合は必要なサイズを買い足す必要がある。
略して「エキパン」と呼んだりする。
w3/8やM10の全ネジボルトを掴んで締めたり、緩めたりするための道具。
材料編
冷媒配管のガス溶接時に用いる接合材。主にりん銅ろうを用いる。
銀の含有率が高くなるほど低温で溶けるので、銅自体の溶融温度に到達するまでの温度帯の幅が大きくなり、溶接しやすくなる。
現代の空調工事で使用する冷媒配管用の銅管は、6.35mm~38.1mmであるが、冷蔵庫・冷凍庫を冷やすための冷蔵・冷凍工事では、さらに太いサイズの配管を使用することもある。
冷媒配管は基本的に細いほうの「液管」と太いほうの「ガス管」のペアになっている。
空調工事に用いる冷媒配管用の銅管は基本的に保温材の被覆が付いており、古くから8mm~10mmの保温材が使われれてきたが、現代の高温多湿の気候による夏場の結露が激しくなってきており、ガス管の保温材は基本的に20mmが基本、場合によっては液管の保温材も20mmで施工する現場も出てきている。
配管サイズはインチ表記で呼ぶことも多いので、ミリメーター表記と両方覚えておく必要がある。
以下に空調工事で用いる配管サイズ表を記す。
通称 | インチ表記 | ミリメーター表記 |
2分(にぶ) | w1/4(=w2/8) | 6.35mm |
3分(さんぶ) | w3/8 | 9.52mm |
4分(よんぶ) | w1/2(=w4/8) | 12.7mm |
5分(ごぶ) | w5/8 | 15.88mm |
6分(ろくぶ) | w3/4(=w6/8) | 19.05mm |
7分(ななぶ) | w7/8 | 22.22mm |
インチ(いんち) | w1 | 25.4mm |
インチ1分(いんちいちぶ) | w1 1/8 | 28.58mm |
インチ2分(いんちにぶ) | w1 1/4(=w1 2/8) | 31.75mm |
インチ4分(いんちよんぶ) | w1 1/2(=w1 4/8) | 38.1mm |
冷媒配管用のコイル状に巻いてある銅管。基本的に20mの長さがある。
通常、銅管は硬くてまっすぐの直管になるが、なましてあるので取り回しが良く、施工しやすい。
単独のコイル状になった銅管なので、ペアコイルに対してシングルコイルと呼ぶ。
冷媒配管用の、シングルコイルが2本のペアになっている銅管。
シングルコイルに対してペアコイルと呼ぶ。
「にふんさんぷん」ではなく「にぶさんぶ」と呼ぶ。
これは冷媒配管用のペアコイルの中でもルームエアコンの配管で用いることがほとんどで、サイズは2分が6.35mm、3分が9.52mmである。
「にぶよんぶ」、「ごぶさんぶ(またはさんぶごぶ)」と呼ぶ。
業務用のパッケージエアコンを施工する際に多く用いられる配管サイズで、冷媒ガスがR410A以降になってからの6馬力(冷房能力16.0kw)までの室内機はこの2種のどちらかのサイズになる。
VVFという種類の、直径1.6mmの単線のが3本セットになった電線のことを指す。
通称「いちろくさんしん」と言う。VVF2.0mm×3芯だと、「にみりさんしん」と呼ぶ。
これは冷媒配管とともに室内機から室外機まで配線される電線のうち、「電源重畳方式」とよばれる、電源を送る役目と、通信、制御を行う役目の両方を兼ねた方式の時に用いられる電線で、次のような時に用いられる。
- ほとんどのルームエアコンの配線
- 室内機1台と室外機1台のペアになっているパッケージエアコンの配線
- 室内機が2台~4台で、室外機は1台、なおかつ室内機は同時運転になるときの配線
ビル用マルチエアコンは室内機の電源を別回路で単相の200Vを供給する必要があるため、この電線を用いることはない。(使えないというわけではないし、その200V供給のための電線としては使われることもある)
塩化ビニルパイプのことで、「ぶいぴー」と呼ぶ。
空調工事では、ドレン配管に用いるパイプである。
まとめ
今後も、職人1年目だったり、数年やっていても忘れてしまったりするようなことをまとめて書いていきたいと思いますので、もしよろしければリクエストをコメントに残してもらえると嬉しいです!
コメント