空調屋になったら知っておくべき空調工事現場の流れ〜天井カセット形空調機更新(入替)工事編

4方向天井カセット

今回は天井カセット形空調機の更新(入替)工事の流れについて解説して行きます。

以下の想定での工事とします。

  • 既設の5馬力(14.0kw)4方向天井カセット形空調機を配管流用で新しい同能力、同じ形の空調機と入れ替える
  • 今回は稼働中の店舗・事務所における1台のみの更新工事とするため、基本的に1日で完了する(休業日に行う想定)
  • 作業人員は2人とする
  • AM:9:00〜PM:5:00の間で完了を目指す(トラブルなくスムーズに行けばお昼過ぎで試運転まで完了する場合あり)

それでは解説していきます。

 

目次

更新(入替)工事の現場の流れ

STEP
AM:8:40頃 現場到着

現場がAM:9:00開始ということで、20分くらい前には現場に到着しておくと、車輌の駐車場所や現場の把握をする余裕ができます。もちろん、事前にしっかり現場調査や打ち合わせができているなら言う事ないです。

STEP
AM:9:00 作業開始〜室内養生、室外機ポンプダウン
通路の養生

まずは室内の養生からです。

もし机・椅子・棚など、作業に支障があるもので動かせる場合は、可能であれば写真に撮って配置を記録しておいたり、養生テープで床に位置をマーキングしたりして元に戻せるようにしましょう。

作業場所を確保できたら、床に傷が付いたりしないしないようにブルーシート(使い捨てのロールになっているもの)を敷き、机や棚に埃やゴミがかからないよう透明のコロナシート(これもロールになっており、できればダブルのもの)で養生します。

養生がもし一人でできそうであれば並行して室外機にゲージマニホールドを接続し、ポンプダウン(配管内の冷媒ガスを全て室外機に押し込むこと)を行います。室外機にポンプダウンスイッチがあれば室外機の前蓋の裏に書いてある説明通りに操作し、もしなければリモコンで冷房試運転を行いポンプダウンします。

STEP
既設室内機・室外機撤去
ポンプダウンと撤去

ポンプダウンが済んでしまえば、電源ブレーカーを落とすことができます。先に室外機の方で電源が落ちたかどうかと、配管内の冷媒ガスが全て室外機に回収できたかを確認します。

電源が落ちたかどうかはLEDの消灯でも分かりますが、基本的にはテスターを使い確認することを推奨します。冷媒ガスについては、液側の配管のフレアナットを少し緩めるか、サービスポートのムシを押して、ガスが出てこないことを確認します。これで配管と配線が切り離せる状態になります。

室内機は化粧パネルの取り外しからです。4方向天井カセット形であれば、通常はまず吸い込みグリルを取り外し、電装ボックスの蓋を開けます。その中の基盤にパネルから出ているコネクターなど差してあるので、それを抜いておきます。そしてコーナーパネルを取り外すとパネルを室内機に固定しているビスなどが出てくるので、それを緩めるなり外すなりすれば化粧パネルを取り外すことができます。電線関係もここで外しておいていいですね。

化粧パネルが外れれば冷媒配管とドレン配管の接続口が出てくるので、まずは覆っている保温材を剥がします。

冷媒配管は通常、細い方の液管のフレアナットを緩めて本当に冷媒ガスが残っていないかを改めて確認します。もし組み合わせの違う室外機でポンプダウンしてしまっていた場合はここで気づくことができます。「組み合わせが間違いない」という場合でも、液管側のフレアナットから緩めるクセをつけておいた方が事故のリスクを減らせます。

ドレン配管はホースバンドでとまっていることが多いので、バンドを緩めれば大抵外れると思います。既設空調機が三菱電機の場合はホースバンドに接着剤がついているでしょうから、カッターなどで切るしかないです。

配管・配線が切り離しできたら、いよいよ室内機を降ろすことができます。2人で声を掛け合いながら気をつけて作業しましょう。

並行して室外機も切り離しておけば効率よく作業を進めることができます。

5馬力の室外機は100kgくらいあったりするので、運ぶのに台車を忘れずに持っていっておきましょう。

STEP
吊り段取り・配管盛替え

既設の機器を撤去したら、新設の室内機の吊ピッチに合わせて吊元を作り、配管も盛替えます。

既設の機器が同じメーカーで年代がそう古くなかったり、違うメーカーでもダイキン・東芝・パナソニックあたりは現行であれば吊元の位置も近く、配管の位置もだいたい同じなのでそのまま流用できたりします。

しかし、冷媒配管に関しては、既設の機械が古くて冷媒ガスR-22の時代の5馬力のものだとガス管が6分(19.05mm)で配管してあるはずなので、溶接するなりして5分(15.88mm)に替えてある必要がある場合もあります。

室外機についても同様に冷媒配管の盛替えが必要であれば行います。

機械が新しくなったことによって室内外の通信線、リモコン線、電源線などが短くて届かない場合は圧着して延長しておきます。

STEP
室内機吊込み・室外機据え付け

配管や配線の仕込みが完了したら、いよいよ室内機を吊り込みます。

脚立を適正な位置に立て、二人で息を合わせて持ち上げ、吊り込みましょう。最初のうちはどこを持てばバランスが取りやすいか分からなかったり、吊りボルトに機械がつっかえて上にあがらなかったりすると思いますが、少しコツを伝えるとするなら、ある程度持ち上げたら手首に近い手のひらで室内機の吊金具の下あたりの角を支え、空いた指先で吊りボルトの位置を調整しながらうまく金具(ネコ)に引っ掛ける、と言う感じです。

無事吊れたら室内機の高さを調整し、ダブルナットで確実に締めます。

また、室外機の方は足の固定がスライドブロック固定であれば室外機を乗せて防振ゴムを足のところに挟み込み、ボルトとナットで固定するだけですが、基礎にアンカーで固定しなければならない場合は先にアンカー打設をして室外機を据えます。

室外機の据え付ける時も二人で声を掛け合いながら周囲に注意して行いましょう。

STEP
配管・配線接続

室内機の吊り込み、室外機の据え付けが完了したら、また二手に分かれてそれぞれ配管・配線の接続を行います。

注意点として、冷媒配管のフレアナットは必ず新しく取り付ける機械のものを使い、フレア加工しなおしておきましょう。既設のものを使うとフレア面が綺麗に密着、密閉されずガス漏れの原因となります。ドレン配管に関しても、もしホースバンド接続ならば新しい機械に付属しているホースバンドを使いましょう。こちらも水漏れの原因を防ぐためです。

STEP
気密試験・真空引き、化粧パネル取り付け、リモコン取替え
真空引き

冷媒配管がつながれば、ゲージを取り付けて気密試験を行います。

 

店舗や事務所の単体の空調機の入替でいちいち重たい窒素を持ち出してやらないよ!

 

と言う意見もあるかとは思いますが、5馬力程度であれば1.5㎥の窒素を1本で対応できますし、『ALbee Cool』という、登録制のレンタル型窒素もあります。これは最初に登録料が発生し、空になったら取扱店にて新しいボンベと交換するような契約形態のレンタル窒素です。一度に2本使いたければ、2本分の契約をする必要があったり、コストが結構かかってしまうのが難点ですが、圧力調整器がボンベ自体に付いており、ホースを繋ぐだけですぐ使用することができる上、残りのゲージも付いているので空になる前に交換しておく、というようなことはできます。

サイズもコンパクトで、修理の方や5馬力以下の空調であれば残量にもよりますが4Mpaくらい簡単にかけることができます。

 

日本エア・リキード → ALbee Cool

取扱代理店 → 株式会社カパス

 

気密試験をしておけば、何よりも自分が安心ですし、後々ガス漏れのクレームが起きた際にも施工不良によるものか機械内部の腐食や劣化が原因なのかの線引きがはっきりできるため、やっておくのをおすすめします。アナログゲージでは一定時間放置しないとよく分かりませんが、デジタルゲージを使えば、数秒〜数十秒で0.001Mpaづつ減少していくような微細な漏れも検知できます。

 

気密試験で問題なければ真空引きを行います。5馬力の空調機の真空を引くのに必要な排気量は、おおよそ50L/min以上の排気量があれば対応可能ですが、その中でなるべく到達真空度の数値が低いものを選ぶといいと思います。

それでも心配な場合は使用する真空ポンプの対応可能範囲を確認しておくと安心です。

 

気密試験や真空引きの間は放置時間が発生しますので、その間に室内機の化粧パネルを取り付けたり、リモコンを取り替えたりします。

それでも時間が余るなら、ある程度使わない道具や余った材料を片付けておくといいです。

STEP
試運転・片付け

真空引きが完了すれば液側、ガス側両方のバルブを開放し、冷媒配管内にガスを通します。そしていよいよ試運転です。(真空引きの時間は配管距離にもよるとは思いますが30〜60分程度です)

電線の結線を確認した上で電源のブレーカーを上げ、リモコンが立ち上がるのを待ちます。

立ち上がったら日時設定して試運転をします。基本的には冷房試運転を行うと思いますが、寒い時期であれば暖房で構わないです。(ダイキンなど、暖房設定しても最初の数分は冷房で運転する場合もあります)

30分程度運転してリモコンにエラーが表示されず、室内機から吹き出す風が冷たい(あるいは暖かい)と感じられれば大抵大丈夫です。また、冷媒配管の温度が室内機から吹き出している風の温度以下か(あるいは以上か)、室外機のファンから出ている風がその逆になっているかどうかも判断基準になります。

風速計や温度計があればそれで測定するのが一番ですが。

 

以上の項目で問題がなければ完了です。片付け、清掃を行いましょう。ビスなどを落としていないかどうかは確実に確認しましょう。

タイルカーペットのオフィスなどは掃除機を持っていっておくといいです。

 

オフィス

まとめ

以上、更新工事での流れを解説してきました。

更新工事では周りが仕上げ物ばかりですので養生には特に気を使いましょう。狭いところで作業するときは腰袋を外して行う事も検討しましょう。病院など高価な医療機器があったりパソコンがあるオフィスなど、可能な限り動かせるものは動かし、動かせないものはプラダンなどを上にかけておき、万が一工具などが落下しても破損しないようにしておくといいといいです。

天井もそのままであることがほとんどですので、室内機の撤去や吊り込みの際にも注意して作業しましょう。もし溶接が発生する場合には近くに火災報知器がないかどうかも確認し、あった場合は温度感知のタイプには濡れ雑巾を硬く絞ったものを巻き付けたり、煙感知のタイプにはマスカーテープなどビニールを巻きつけて養生しましょう。

以上、参考になれば嬉しいです。

KSK
しがない空調配管工
地方在住の会社員空調配管工です。
まだまだ未熟者ですが、皆さんのお役に立つ情報をお届けできれば嬉しいです。
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