今回は新設で空調機を設置する際の工事の基本的な行程について項目ごとにまとめてみます。
室内機を据付ける
吊る場合
図面などに従い吊る位置を墨出しする。
アンカーを打設したり、Lアングルなどの金物を使ったりして吊元を作る。
吊り下げたボルトに付属のワッシャーとナットを取り付けておき、室内機を吊る。
天井カセット形やビルトイン形はクロスなど仕上がったら化粧パネルを取付ける。

床置きの場合
図面などに従い据付ける位置を墨出しする。
店舗・事務所用の床置き空調機であれば付属の木台があるので、それを可能であればアンカーやビスで固定する。
固定した木台に床置き室内機を乗せ、天頂部を転倒防止かのもので固定する(設備用床置き空調機はアンカーで直接固定したり、防震架台を使用したりする。
室外機を据付ける
テナント工事など、概略図しかない場合は現場の都合で位置を決定するが、冷媒配管を室外機のどの面から入れるのかなど、取り回しを考慮した上で決定する。
詳細な図面がある場合はそれに従う。
室外機用基礎に直に固定する場合は各種アンカーを打設し固定する。
スライドブロック(レールブロック)を使って六角ボルトで固定する方法もよくある。
いずれの場合も防震ゴムを敷くことが多く、必要に応じて転倒防止措置もとる。
室内機から室外機までの冷媒配管工事を行う
施工図があればその配管ルートで、アンカーを打設したり吊金物を使用したりして吊ボルトを下げ、吊バンドやスーパーロックを取付けて配管支持を作る。間隔は配管の径によって異なるが、概ね1.5m以下にすることが多い。
冷媒配管は一部を除いてガス管(太い方)と液管(細い方)のペアで構成されるが、基本的にバンドの下側にガス管、上側に液管を乗せていく。
配管距離が長かったり、一本もので配管するのが困難な場合は溶接などで配管を接続する必要がある。
溶接以外にも火無し継手の「おっぞんくん」という商品を使用したり、フレアナットを利用した「ユニオン」というものを用いて接続したりする。
店舗・事務所用室内機及び室外機は付属のフレアナットを使い、フレア加工で冷媒配管を接続することが多い。ビル用マルチなど能力の大きな空調機の配管は溶接での接続も多い。
最近はフレア加工の不要なダイキンの「フレアレスジョイント」というものもある。
内外渡り配線工事を行う
店舗・事務所用のパッケージエアコンであればVVF1.6mm(直径)以上の3芯を使用する(全長が長い場合は2.0mmを使うこともある)。
ビル用マルチエアコンであれば0.75sq〜1.25sq(断面積:sq=m㎡)のより線の2芯を使用する。
店舗・事務所用は室外機に送られた動力(3相)の200Vから単相の200Vを取り出し、渡り配線を通じて室内機にその200Vの電源を送る役割と通信の両方の役割があるので1.6mm(距離やメーカーの仕様によっては2.0mm)で、3芯を使用する。
ビル用マルチエアコンの室内機には別回路で単相の200Vが送られるため、通信の微弱な電流しか渡り配線に流れないので0.75sqなどの細めの2芯が使用される(三菱電機などはシールド線付きで1.25sq以上が求められている)。
前述のように店舗・事務所用パッケージエアコンの渡り配線は3芯を用いるので、端子台も3つ接続するところがあるが、メーカーによって「1、2、3」だったり、「R、S、L」とかだったり、もっと違うものもあったりするので施工する機械の据付説明書をよく確認して接続する。
ドレン配管工事を行う
施工図があればその通りに、最低でも1/100、可能であれば1/50の勾配が取れるか一応確認して配管ルートを決定する。
吊元の間隔は1m以内にし、アンカー打設や吊金物を使用して吊ボルトを下げ、吊バンドやスーパーロックを取付けて配管支持を作る。
保温をポリエチレンフォーム(ライトカバー)で行う際はこの時点で保温したパイプをバンドに乗せていく。
エルボやソケットなどの継手を使用し、パイプを接続していく。
接着剤の付け忘れがないよう、青色接着剤を使用するのが好ましいが、情況に応じて透明も使用する。
グラスウールマットやポリエチレンフォーム(ライトカバー)で保温する。
リモコン工事を行う
0.5sq~0.75sqのより線の2芯を使用して配線する。
室内機のリモコン端子台に接続する。
壁の中に仕込めるのであれば配線を落とし込んでおき、壁のボードなどが貼られた時点で開口をし、クロス貼りなど終わって仕上がってからリモコンを取付ける。
もし埋込BOXを仕込むのであれば位置を控えておき、開口しなければならない。
露出で配線しないといけない場合はモールや露出型BOXなどを使用して配線とリモコンの取付を行う。
気密試験を行う
※基本的にパッケージエアコン、ビル用マルチエアコンの施工の際は気密試験を行う。
室外機がまだつながっていなくて、フロアごとなど途中で気密試験を行いたい場合は、チェックジョイントなどを使い、耐圧ゲージを取付けられるようにする。室外機がつながっていればサービスポートに耐圧ゲージを取付ける。
気密試験を行う範囲の冷媒配管がすべてつながっていることを確認したうえで窒素で対象の空調機の設計圧力の高圧側の数値まで加圧する。新品の機械の場合は問題ないと思うが、室外機の閉鎖弁が確実に閉まっていることを確認して行う。(室外機の中の設計圧力が低い部位まで加圧してしまうと壊れる)
店舗・事務所用パッケージエアコンでは予算的、工程的問題から気密試験を行わないこともあるが、後から点検できない場所に配管の接続部がある場合は必須で行う。
真空引きを行い、必要に応じて冷媒ガスを追加充填する
施工する空調機の能力に見合った真空ポンプ(排気量や真空到達度、対応馬力数など参照)を使い、適切な時間、真空引きを行う。
ビル用マルチの場合や、冷媒配管距離が長い場合など、必要に応じて冷媒ガスを追加充填し、閉鎖弁を開ける。
店舗・事務所用パッケージでチャージレスの範囲内の配管距離であれば、真空引き後、そのまま閉鎖弁を開く。
試運転を行う
リモコンの端子や通信のみの端子に電源が乗る配線が繋がっていたりすると、リモコンや基盤が壊れるので注意。
電源ブレーカーを上げ、リモコンが立ち上がったら時計合わせ他必要な設定を行う。
ビル用マルチの場合はリモコンでアドレスを設定するメーカーもある。
リモコンが問題なく立ち上がり、設定も終えたら試運転してみる。
季節によって冷房か暖房で運転してみて、室外機の冷媒配管の温度や室内機の吸込みと吹出しの温度差などから運転が正常に行えているかを判断する。
最後に
以上、新設時の空調工事の実務について大雑把に解説してみました。
施工していく際の作業の手順は、冷媒配管よりもドレン配管を先に行うこともあり、前後する場合もありますが、おおむねこんな感じです。
大体の流れがイメージできると現場でも動きやすくなりますので参考にしてもらえると嬉しいです。
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