前回は空調配管工の必須道具のうち、手工具編でした。
前回の記事はこちら↓

今回は空調工事ならではの工具を紹介していきたいと思います。
銅管カッター(チューブカッター)
1つ目は銅管カッター(チューブカッター)です。
銅管以外にも、薄肉のステンレス管やアルミ管、硬質塩ビ管なども切れるため、汎用的にチューブカッターという名称で販売されていますが、空調配管工の仕事では冷媒配管用の銅管を切る際に使うことがほとんどなので、『銅管カッター』と呼ぶことが多いです。
円盤状の刃と2個のローラーの間に銅管を挟み、銅管カッターを回転させて少しずつ切り込んでいきます。
切り込みを深くしていくにはグリップ部を時計回りに締めていきます。
回転してはグリップを締めの繰り返しで少しずつ切り込んでいくと、銅管が切れる仕組みです。
狭い場所で通常のカッターではグリップ部が当たってしまう時に、ミニサイズが重宝します。
しかし通常の銅管カッターと比べて、ミニサイズでは切ることのできる最大直径が小さくなってしまいますので、両方持っておくのがおすすめです。
1番のおすすめはやはりREXですが、結構値段が高いので、最初に揃えるものとしてはスーパーツールもおすすめです。
フレアツール
フレアツールとは、冷媒配管用の銅管の先端にフレア(広がった裾のような形)を作るための道具です。
多くの空調機では、機械への配管の接続に『フレアナット』というものを用います。(下の写真↓)

銅管の先端にこのフレアナットを差し込み、先程のフレアツールでフレアを作ると、フレア部分にこのフレアナットが引っかかって抜けない状態になります。
この状態で機械側の『おねじ』になった部分にフレアナットを合わせ、締め込んで接続するといった流れです。
最初は手動式のラチェットタイプで仕組みと感覚を覚えて、慣れたら奮発して電動フレアツール購入しましょう。
電動は作業効率が段違いです。
特に、数をこなさなければいけないルームエアコン屋さんや、新築で何十、何百台の室内機を接続しなければならない場合など、作業時間も疲労もグッと減らせます。
手動式のおすすめはこちら↓
電動式はこちら↓
REXはw5/8(5分)とw3/4(6分)のライナ(対応のコマのようなもの)が別売りですので注意が必要です。
ライナだけでなく、ライナを装着するクランプも追加で購入しておく方が、付け替えの手間が無くてラクです。
ルームエアコンだけであれば付属分で大丈夫です。
リーマー
リーマーとは、上述のフレア加工などをする前に、切った銅管端部のバリを撮るための道具です。
最近はほとんどクランクリーマーというものが主流になっています。
これで空調工事でフレア加工する可能性のあるサイズは全てカバーできます。
先端の山になった部分を銅管端部の中に突っ込み、少し押し当てながら回せば、銅管の内側のバリを削り取ることができます。
フレアナット用トルクレンチ
空調機と冷媒配管をつなぐフレアナットは、適正な力(トルク)で締める必要があります。
締めが甘かったら配管の中の冷媒ガスが漏れますし、締め過ぎてもフレア加工した部分が伸びたり捻れ切れたりして漏れます。
そんな時に必要になるのがトルクレンチです。
車屋さんがホイールナットを締めるのに使うトルクレンチとは形状が違って、フレアナットのサイズに合わせた形をしています。
理屈は一緒で、適正なトルクがかかったら「カクンッ」とクラッチが効いて空回りするような感覚です。
熟練の職人はモンキーレンチだけを使い、締め付けトルクの感覚は手で覚えているので使わない職人さんもいますが、最初はその感覚を覚えるためにも使った方がいいです。
お古とかだとクラッチがかかるポイントが狂っている場合があるので、できれば新品で揃えたいところです。
単純に対応したフレアナットにジャストサイズで作られているため、掴みやすく締めやすいので、w1/2(4分)やw5/8(5分)は私も未だにトルクレンチを使っています。
ベンダー
ベンダーは冷媒配管を曲げ加工するのに使います。
数種類ありますので解説していきます。
レバーベンダー
レバーベンダーはいろんなサイズを揃える必要があります。壁際で曲げたりするのに適していますが、1サイズにつき1つ必要になりますので、揃えるのが大変だったりかさばるのがたまにキズです。
w3/8(3分)〜w3/4(6分)まであればとりあえず対応できます。
冷蔵・冷凍の配管をする職人さんが昔から使われているイメージがあります。
ラチェット式ベンダー
次に紹介するのはラチェット式ベンダーです。
1セットで何種類のサイズにも対応できるのですが、レバーベンダーに比べるとトルクが弱く、なまし銅管用であることが多いです。
空調配管工はなまし銅管を使うことが多いため、レバーベンダーよりもこちらを使うことがほとんどだと思います。
銅管をセットしてレバーを引くとシュー(半円になった部分)が押し出され、カチッと音がするとそこでシューが固定されます。
それを繰り返して任意の角度になるまで曲げていきます。
直管ベンダー
直管ベンダーは、先述のレバーベンダーやラチェット式ベンダーでは対応できないような直径の大きな直管を曲げる際に使います。
手動式と電動式があり、現場が電気が使える環境であれば断然電動がおすすめです。
私が普段使用しているのは、REX(レッキス)のパイプベンダです。
w7/8(22.22mm)からw1 1/4(31.75mm)までのガイドとシューがセットになっています。
その上のw1 1/2(38.1mm)を曲げることのできる直管ベンダーというと、イチネンTASCO(タスコ)の『TA515EG』というモデルしかなく、これ単体でも実勢価格60万円ほどからと高価すぎるうえ、シューとガイドを別途購入するのでさらに高額になります。
38.1mmを曲げたいときには、あきらめて銅管エルボで溶接するか、同じくイチネンTASCOの手動ベンダーとガイドとシュー合わせて30万円はしないくらいですので、それを購入するのが現実的です。
手動式↓ ※シューとガイドは上記のものが共通で使えます。
スプリングベンダー
ベンダーで最後に紹介するのはスプリングベンダーです。
名前の通り全体がスプリング状になっていて、冷媒配管用の銅管の中に挿入して使います。
中にスプリングベンダーが入っていれば、少々乱暴に手曲げしても銅管が潰れてしまうことはありませんが、スプリングが取り出せなくなるほど急激な曲げ、連続する曲げには注意が必要です。
バネの真紀の向きを見て、絞ってい行く方向にねじりながら抜くと多少抜けやすくなります。
w3/8(3分)、w1/2(4分)、w5/8(5分)のものを持っておけば安心です。(慣れてきたらw3/8はいらないかも)
先述のイチネンTASCOからもスプリングベンダーが発売されていますが、銅管の切り口に少しでもバリがあると挿入が困難なため、挿入しやすいESCO(エスコ)のものがおススメです。
錆びにくいステンレス製と、濡れたら錆びる普通の鉄製がありますが、高価なステンレス製を買う必要はないと思います。
そもそも濡れるような使い方は冷媒配管の中に水分が入るのでご法度です。普通の鉄製で十分使っていけます。
溶接器

空調配管の工事において、冷媒配管用の銅管を接続する方法は主にフレアナットをはじめとした継手による接続と、ガス溶接による接続です。
基本的なガス溶接では2種類のガスを使います。
『酸素』と『アセチレン』です。
高圧ガスの入ったボンベの色はガスの種類ごとに定められており、酸素のボンベは黒く、アセチレンのボンベは赤褐色色をしています。
ボンベにはいろいろサイズがありますが、よく使われるのは0.5㎥、1.5㎥、2.0㎥です。
ガス屋さんなどでボンベを購入して、酸素やアセチレンを充填してもらいますが、空調部材を購入している材料屋さんが取り次いでもらうこともできると思うので、そちらの方が楽かもしれません。
ボンベの保管については高温の場所や直射日光をさけるなど、取扱に十分注意してください。
使い方としては、上記のボンベにそれぞれレギュレータ(圧力調整器)を取り付けて、ホースをつなぎ、先端に吹管を取り付けます。吹管のことを溶接器と呼んだりもしますが、現場ではこれら一式の総称として溶接器と呼ぶことが多いです。
ガス溶接を行うには技能講習を受けて資格証を発行してもらわなければ現場で溶接作業を行うことができませんので、技能講習を受けることも必須です。
冷媒配管の溶接はロウ付け溶接で、りん銅ろうの溶接棒を使います。
ボンベの中のガスは大変高圧で使い方を間違えると燃焼、爆発の恐れもあるので、講習をしっかり受けてから溶接しましょう。
ちなみに酸素の圧力調整器は、ボンベとの接続が関東式と関西式がありますので、購入したボンベがどちらなのか確認してから購入するようにして下さい。
酸素圧力調整器↓
アセチレン圧力調整器↓
調整器とホースの間に逆火防止弁を入れておくと安心です。
ホース↓
吹管↓
また、アセチレンガスだけを使う溶接器もあり、最近は直管にも十分対応できるものもあります。
エキスパンダ
エキスパンダは、冷媒配管用銅管の端部を拡げる工具です。
主に同サイズ同士の銅管の片方を拡げて、もう片方が入るようにするために使います。
直管は片方の端部が拡管になっていたり、ソケットを使えば銅管同士をつなぎ合わせて溶接できるのですが、エキスパンダがあれば、任意のポイントでつなげて、ソケットを使うのと比べて、溶接する箇所が半分で済みます。
溶接器と併せて揃えたいツールです。
真空ポンプ
冷媒配管内が室内機から室外機までつながったら、その中に冷媒ガスを充填するのですが、その前に配管内を真空にしなければなりません。
冷媒ガスに空気が混ざると、単純に効率低下する上に、冷媒ガスが低温になる部分で空気に含まれる水分が凍り付いて配管が詰まったりするので、配管内は真空にしておかなければなりません。
そのために真空ポンプを使います。
対象とする空調機の能力に応じた真空ポンプを使わないと十分な真空状態にならないため、その時々で適切な真空ポンプを使いましょう。
ルームエアコンであればバッテリー駆動のものでも十分です↓
10馬力くらいまでのパッケージエアコンなら↓
20HP以上のビル用マルチなどには↓
ゲージマニホールド
先述の真空ポンプを室外機のサービスポートに接続する際に、このゲージマニホールドというものを介します。
単純に『ゲージ』と呼んだりします。
目盛りと開閉のバルブ、接続口が低圧用と高圧用の2組あり、真ん中に両方にアクセスできる接続口が付いているような構成です。
真空引きするときにはこの目盛りが-0.1を指すところまで引きます。
他にも冷媒ガスを追加充填したり、試運転で圧力を図ったりするのにも使ったりします。
古い空調機でR-22の冷媒ガスを使用している空調機の修理や冷媒回収を行うときはR-22用のゲージマニホールドが必要になりますが、新設で空調機を取り付ける場合はR-410AかR-32の冷媒ガスを使用する空調機になりますので、とりあえずこちらに対応したゲージマニホールドを揃えればいいかと思います。
まとめ
以上、空調屋の仕事ならではの道具、工具を紹介してきました。
想定した寸法通りにベンダーで配管を曲げて、溶接でつないでいってきれいに配管できた時など、達成感があって空調屋の醍醐味かなと思います。
ルームエアコンしかしないのであれば、ベンダーや溶接器は必須ではないかもしれませんが、ビルやテナントで業務用の空調機を取り付ける工事を行うのであればほぼ必須です。
しかし直管ベンダーはずば抜けて高額ですので、銅管エルボで曲げを作ればそれで賄うことはできます。
予算と自分が請け負う仕事内容に応じて道具もそろえていくのがいいと思います。
以上、参考になればうれしいです!
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